彩羽は、俺の服をギュッと握って、
泣き出した。

…恐らく、彩羽は失恋の味を知らない。

だから、きっと今…とても苦しいだろう。

大声で泣き続ける彩羽を、慰める。

この際、彩羽を奪ってもいいだろうか。

あんな中途半端野郎に泣かされるくらい
なら、俺に愛されてもいい。

どうして、こんなに良い子が、
悪意で傷つけられないといけないのかが
本気で分からねぇんだよ。

『彩羽…?って、おい』

彩羽の反応がなくなった頃。

泣き止んだかと思ったら、泣き疲れた
らしく、ズルズルともたれかかってきた。

呼びかけても起きず、完全に熟睡である。

…本当、コイツ馬鹿なのか?

普通の男の前で同じことしてみろ、
ホテルに直行だからな。

無防備な上に、警戒心のなさ。

何度目かわからないけど、呆れてしまう。

すやすやと眠る彩羽の寝顔は、
この世の何よりも可愛くて。