一瞬、時雨と愛のことを思い出した後。

焦がすほどの嫉妬に、胸を焼いた。

『待て』

「…っ!」

彩羽ちゃんの片方の腕を掴んで、
動けなくした。

彩羽ちゃんは、弾かれたように俺を
潤んだ目で見上げる。

…さっき、愛にされた時は何とも思わなかったのに。

ドクリ、と嘘みたいに心臓が高鳴る。

その顔は、ズルい…。

とことん、好きを自覚してしまう。

「葵、離せよ」

『嫌だ』

言われるほどに、離したくなかった。

「彩羽泣かせといて何様だ。

 さっさとあの女と時雨と話しつけて
 から出直せ」
 
あの女とは、愛のことだろう。

厳しい言葉を浴びせた由宇は、本気で
怒っていて、ビリビリと殺気が伝わった。

由宇も、彩羽のことが好きなんだと
理解した。

突き刺さる殺気に、怯みかける。

「由宇…いいよ、怒らなくていいから…」