ファーストキス=しょ、処女なの!?

いや、正確ですけども。

白鷺さんは、平然と私の手を引く。

「まぁ、良いや、帰るぞ。

 送ってく」

『え』

切り替えが早いのは白鷺さんでは…?

一連のことはサラッと流れていった。

日が沈んでいき、暗くなり始めた道を
二人で歩く。

「名前で呼んでくれねぇの?」

『な、名前…』

「桃李は名前だろ、俺はダメなのか?」

さっきとは違って、やけに緩い雰囲気の
会話だ。

落差が激しすぎない?

…男の人を名前呼びするって、ソウ君と
頼人以来だ。

ら、頼人は同級生だし、何となく
呼べたけど。

この人は、赤城のトップで、先輩なんだ
よね。

いーのかな?

「呼んでほしい」

『…っ』

クールなのに、甘えるのがうますぎる。

そ、そんな言われたら断れないじゃん。

『…ゆ、由宇』

少しだけ吃っちゃったのは許してほしい。

白…由宇は、私が呼んだ瞬間、今までに
なく嬉しそうに、口元を緩めた。

「これからも、そう呼べ。

 敬語もなくていい」

『…うん』

由宇は、私を愛おしそうに見てくる。

くすぐったいけど、心地いい。

その瞳が、凄く奇麗で、吸い込まれそう。

…それなのに、何でかわからないけど。

ー「ぜひ、俺の姫になってくれない?」

私の頭に、ずっとあるのは…。

いつだって、あの人だった。