一期一会。−1−

鞄に荷物を詰め込んで、チャックを閉めて
完了。

帰るか、と教室を出ようとしたら、
頼人に「彩羽」と呼び止められた。

ぉわっ!…び、びっくりしたぁ!

急なことに驚いて、上半身だけ頼人の方を
向いたら、頼人が笑顔で立っていた。

「バイバイ、また明日」

『…あ、うん、また明日』

なんだ、それだけ?

慣れない挨拶にまごついてしまうコミュ障なのです。

引き止められてドキドキしたよ。

そんな私に頼人は、ヒラヒラと手を振る。

振り返したら良いんだろうか?

小さくヒラッと手を振り返して、
今度こそ教室から出た。

挨拶だけで済んだことにホッとした。

また氷室さんみたいに、見透かされてんのかと思っちゃった。

そんなわけないよね。

だって、白樺君は一般の人だもん。

靴を履き替えて、帰路を辿る。