一期一会。−1−

うっ、こ、これは、抗えない。

食欲をここまで掻き立てるケーキは、
多分他にない。

フォークを手に取ると、『いただきます』
と手を合わせてケーキを一口サイズに
切る。

チョコレートの香りが、たまらなく
いい。

氷室さんはというと、さっさとフォークを
取ってパクパクと食べ進めている。

遠慮も、敬意の欠片も見られない。

亮さんが呆れ顔でその頭を小突き、
「少しは彩羽ちゃんくらい行儀よく
 しろよ」と説教をくらわせていた。

た、食べたいけどなんだかもったいない
気がしてきて。

チョコレートケーキが、これほど魅力に
溢れるスイーツだったとは。

思い切って、パクリと口にケーキを
突っ込むと、口の中にしっとりとした
感触と同時にチョコレートの甘さが
一気に広がった。