一期一会。−1−

私も氷室さんの向かい側の椅子に
チョコンと腰をかけて、晒されていた素顔
を再びフードで隠す。

…氷室さんのパーカーなんだけど、
こうしていたほうが落ち着くし…、
いいかな?

「そっちのが落ち着く?」

『…』

無言の肯定と同時にフードを深く被る私に
氷室さんは何も追及せずにメニュー表を
差し出してくる。

「ここのケーキは絶品だよ。

 亮…あ、そこの黒髪のお兄さんが
 作ってるんだけどね。

 めちゃくちゃうまいから」

『…そ、うなんですね』

いつになく饒舌な氷室さんを見てると
とても嘘をついてるようには思えなくて、
素直にメニュー表を受け取った。

あの黒髪の綺麗な人は亮さんっていうんだ。