大嫌いの先にあるもの

「僕の所に来たんだろう?それともやっぱり従うのは止めようと思って逃げ出そうとした?」

うっ。

完全にこちらの考えを読んでいる。
なんでわかるんだろう……。

黙ってると黒須が不敵な笑みを浮かべた。

「言い返さないって事はその通りって事か」
「あ、いや、お昼を食べて来ようと」
「丁度いい。僕もこれからランチなんだ」

黒須がビルがある方とは反対の方に歩き出した。
小さくなっていく背中を見てると、また黒須がこっちを向く。

「おいで」
「嫌です」
「手をつないで歩こうか?それとも腕を組む?」

周りには当然、学生たちがいる。
キャンパス内でそんな事をされたらあっという間に噂になってしまう。
黒須は目立ち過ぎる存在なのに。

「どうする?」

従うしか選択肢はない。

「わかりました。今、行きますから」
「よろしい」

黒須がにんまりと笑った。
悔しいぐらい素敵な笑顔。いちいちカッコ良過ぎる。
これ以上、好きになりたくないから避けてるのに逃げられない。

はあぁ。逃げたい。