大嫌いの先にあるもの

「春音ちゃん、何かあった?」

レジカウンターに入って来た滝本さんに聞かれる。
今はDVD店でのアルバイトの時間。
今日は午後2時から6時までで入ってる。その後はBlue&Devilでのお仕事。

今日も忙しい。

「別に何もありませんよ」

店内の返却ボックスに溜まった、DVDの返却処理作業をする。
仕事は沢山あるから余計な事を考えないで済む。

「眉間にシワ出来てるよ」

クスクスと滝本さんが笑った。

「嫌な事あったんじゃないの?聞いてあげるよ。今の時間は暇だし」

5分前から店内にお客さんはいない。
滝本さんは返却されたDVDの盤面を磨き始める。
時間のある時にやる作業だ。

「ねえ?眉間にしわが寄る程、どうしたの?」

作業しながら滝本さんがこっちを見る。

女子学生に囲まれてた黒須が浮かんだ。
しかも笑顔なんて振りまいちゃって。私にはそんな笑顔見せないくせに。

「大嫌いな奴に会ったんです」
「ほー」
滝本さんが興味深そうに相槌を打つ。