「寝てていいぞ。疲れてるだろ」

運転しながら黒須が言った。優しい言葉。
でも、素直になれない。

「大丈夫です。起きてます」
「無理するな」
「無理してません」
「意地っ張りだな。昔は違ったのに」

赤信号で車が止まる。
黒須がこっちを見た。

「眠そうな顔してるぞ」

男らしい大きな手で、ポンポンと私の頭に触れた。

びっくりして息が止まる。
昔に戻ったみたい。
中学生の時もそうやってポンポンってしてくれた。

黒須にそうされるのが好きだった。
胸が弾んで、とってもいい気持ちになった。

今もドキドキしてる。
なんでだろう。

今夜の私は変だ。
このままずっと二人だけでいたいって思う。
家に着かない事を願ってしまう。

あんなに嫌いだったのに、嫌いって気持ちが弱くなってる。

何が起きたの?