おばあちゃん家の帰り道を駅に向かってとぼとぼと黒須と歩いた。
半歩先を歩く黒須になんて言ったらいいかわからない。
黒須と結婚する事はもちろん嫌じゃない。
ただ自分に自信がない。
まだ大学生だし、就職もしていないし、美香ちゃんみたいにピアノの才能がある訳でもない。
いろいろ考えるとまだまだ私は黒須に釣り合っていない。
今、結婚したら完全に黒須に依存してしまいそうで申し訳ない。
「ああ、この香りは」
黒須が急に立ち止まった。
「どうしたの?」
微かに香ってくる甘くて清涼感のある香りハッとする。
「金木犀の匂い」
私の言葉に黒須が頷いた。
「金木犀の香りが漂っている季節に、僕たちが初めて会ったの覚えてる?」
トクンと胸が高鳴った。
私だけが覚えていると思っていた事なのに、黒須も覚えていたの?
「もちろん覚えているよ。私にとって忘れられない日だったから」
――君が春音ちゃん?
――僕は黒須圭介です。よろしくね。
「そうか。覚えててくれたのか」
黒須が照れくさそうに頬をかいた。
「あの時から何か春音に感じるものがあったのかもしれないな。実は金木犀の香りを感じる度になぜか春音の事がいつも浮かぶんだよ。どうやら金木犀の香りと一緒に春音の事が記憶にインプットされてしまったらしい」
「記憶と嗅覚は密接な関係にあるから?」
黒須がハッとしたような表情を浮かべた。
「その話、もしかして僕、春音にした?」
「どうかな。内緒」
ふふって笑うと黒須も笑って、それから真面目な顔をして私を見つめた。
半歩先を歩く黒須になんて言ったらいいかわからない。
黒須と結婚する事はもちろん嫌じゃない。
ただ自分に自信がない。
まだ大学生だし、就職もしていないし、美香ちゃんみたいにピアノの才能がある訳でもない。
いろいろ考えるとまだまだ私は黒須に釣り合っていない。
今、結婚したら完全に黒須に依存してしまいそうで申し訳ない。
「ああ、この香りは」
黒須が急に立ち止まった。
「どうしたの?」
微かに香ってくる甘くて清涼感のある香りハッとする。
「金木犀の匂い」
私の言葉に黒須が頷いた。
「金木犀の香りが漂っている季節に、僕たちが初めて会ったの覚えてる?」
トクンと胸が高鳴った。
私だけが覚えていると思っていた事なのに、黒須も覚えていたの?
「もちろん覚えているよ。私にとって忘れられない日だったから」
――君が春音ちゃん?
――僕は黒須圭介です。よろしくね。
「そうか。覚えててくれたのか」
黒須が照れくさそうに頬をかいた。
「あの時から何か春音に感じるものがあったのかもしれないな。実は金木犀の香りを感じる度になぜか春音の事がいつも浮かぶんだよ。どうやら金木犀の香りと一緒に春音の事が記憶にインプットされてしまったらしい」
「記憶と嗅覚は密接な関係にあるから?」
黒須がハッとしたような表情を浮かべた。
「その話、もしかして僕、春音にした?」
「どうかな。内緒」
ふふって笑うと黒須も笑って、それから真面目な顔をして私を見つめた。



