大嫌いの先にあるもの

え――!

びっくりして黒須を見ると、冗談を言っているようには見えなかった。
今のって、け、結婚の申し込み?

「く、く、くろ」
「はい。どうぞ。春音を幸せにしてやって下さい」

え――!

おばあちゃん、あっさりOKなの?
嬉しいけどさ。

何この急展開。

「いや、ちょっと待って。いきなり過ぎて心の準備が」

黒須とおばあちゃんについていけない。

「黒須さんと一緒になるつもりで、この家を出て行ったんだろう。この間の勢いはどうしたんだい。しっかりしな」

おばあちゃんに背中を叩かれ、前に倒れそうになった。

「そうだけど。でも、なんか……」

本当に私でいいの?
黒須に対して申し訳なくなる。

「春音、急すぎたかな」

黒須が照れたような笑みを浮かべた。

「うん」

本当に急すぎる。
なんでいつも驚かせるの?

前もって言ってくれないの?

一生に一度の事なのに。
プロポーズだってされていない。