大嫌いの先にあるもの

「こうしてお迎えも来たから日本に帰りたいんだが」

黒須がロペス捜査官を睨んだ。

黒須のベッドを囲うように相沢さん、私、ロペス捜査官で立っていた。

「ミスター・クロス。何度も言うようですが、あなたの身の安全の確保がまだ保障できません。デヴィッドが追われていた組織の連中をもうすぐで逮捕できますから、それまでお待ちください」

「そんな事言って、僕を帰したくないんだろ?何度も言うが僕はその組織の連中と何の関係もないし、デヴィッドがジャニスに預けたマイクロチップの行方についても知らない。僕からはこれ以上、何の情報も得る事は出来ないよ。こんな事して無駄だと思うが」

「ミスター・クロス。あと、2、3日ですから。お待ちください」
「あと2、3日ってずっと言い続けてるじゃないか。相沢、弁護士を呼べ。こんな所にいられるか」

かなり黒須は不機嫌そうだった。
子どもみたいに駄々をこねる黒須を初めて見た。

「弁護士は手配しますから、もう少し様子を見ましょう。そんなに怖い顔をしていたら立花さんが怯えますよ」

相沢さんの言葉に黒須が黙る。そして私の顔をじっと見つめた。

「春音と2人きりにして欲しい。じゃなきゃ、今すぐここから出て行く」

黒須の言葉に相沢さんもロペス捜査官も苦笑を浮かべると、病室から出て行った。