大嫌いの先にあるもの

ロペス捜査官の運転する車で相沢さんと一緒に病院に向かった。高度医療が受けられる医大付属の病院に黒須はいると説明され、ますます不安になる。

黒須の怪我はよほど酷いんだろうか。
まさかICUに入院してて、今、意識不明の状態で生死をさ迷っているんじゃ……。

「立花さん、きっと大丈夫ですよ」

後部座席の隣に座る相沢さんが言ってくれた。

「黒須はね、こんな事で簡単に死ぬような奴ではないんです。世界の株価時価総額60%分の30兆ドル(3000兆円)を失ったと言われたリーマンショックの時だって、黒須はそれを逆手にとって一人勝ちした男なんです。ピンチに強い男なんです」

ピンチに強い男。
その言葉が心強い。

そうであって欲しい。

黒須の病室まで行くと、ドアの前には黒人の警察官が立っていた。
ロペス捜査官が身分証を見せると、すぐに中に入れた。

「いつまで拘束するんだ!」

奥から苛立ったような英語が聞こえた。