大嫌いの先にあるもの

深夜2時頃、相沢さんとホテルに帰って来た。

ベッドに崩れるように横になった。
ずっと悪い夢の中にいるみたい。

美香ちゃんが強盗に殺されたと聞いた時もこんな感じだった。美香ちゃんの遺体を直接見るまでは、起きている事が全部、現実だとは思えず、全て幻想の中で起きた事のような気がしていた。

でも、これは幻想でも悪夢でもなく、現実なんだ。
黒須が行方不明になり、今私はロサンゼルス(ここ)にいる。

そう思ったら、目の奥が熱くなる。
まさか大学で会ったのが最後になるなんて。

大学のカフェで、ゆかと若菜がいるのに意地悪な質問をする黒須を思い出した。絶対に私の反応を見て楽しんでいた。

黒須のバカ。
無事に帰って来てって言ったのに……。

枕に顔を埋めて泣いていると――

「春音、どうしたの?」

黒須の声がして、ハッとした。

顔を上げると、ベッドの端に座った黒須がいた。
大学で見た時と同じスーツを着てて、長い足を組んでて、心配そうな顔で私を見ている。

「黒須……」

黒須に飛びついた。

「黒須……!黒須……会いたかった、会いたかったよ……」

黒須が大きな手で優しく頭を撫でてくれる。

「僕も会いたかったよ」
「心配したんだから」
「ごめん」
「さっき警察で遺体も確認して来たんだから。もう、心配させて」

黒須の胸を叩いた。

「本当に心配したんだから」
「春音、もう少しで会えるから」
「えっ?」
「きっと会えるから」
「何言ってるの黒須?」

目の前にいた黒須が急に消えた。