大嫌いの先にあるもの

「これは罰じゃなくて、試練なんですね」
「そうです。今は辛いかもしれませんが、きっと乗り越えられます」

相沢さんの言葉が力強く胸に響く。

これは試練。
絶対に乗り越えられる。

黒須もきっとどこかで頑張ってくれている。

「さっきのバーで黒須が誰といたかわかったし、名前もキャサリンだってマスターが教えてくれたし、明日はもっと沢山の事がわかりますよね」

相沢さんが微笑んだ。

「そうですよ。物事はいい方に進んでいます」

電話の着信音が鳴った。相沢さんのスマホだ。
相沢さんがスマホをタップし、耳に当てると流暢な英語で受け答えを始める。

かろうじて、わかるのは電話の相手がロス市警の刑事さんである事。そしてその電話があまりいい知らせではない事だった。

「わかりました。今から向かいます」

電話を切ると、相沢さんは苦しそうに息をついた。

「相沢さん、今のロス市警の刑事さんですか?」

相沢さんが、小さく頷いた。

「遺体の確認をして欲しいとの事でした」

弱々しい声で相沢さんが言った。

遺体……?それは……

「黒須の遺体って事ですか?」

相沢さんがまた小さく頷いた。