大嫌いの先にあるもの

「試練なんですか?」

「私にはそのように見えます。黒須も立花さんも今、試練を受けているんです。黒須がロスまで来た理由をご存じですか?」

「美香ちゃんの事件を調べる為では?」

「どうしてここまで必死になって黒須が美香さんの事件を調べているかわかりますか?」

「それは……美香ちゃんを今でも愛しているからでは?」
相沢さんが困ったように息をついた。

「やっぱり黒須は言っていなかったんですね」
「何の事ですか?」

「美香さんの事件の真相を黒須は何としても知りたかったんですよ。立花さんと堂々と交際したかったから」
私と交際したかったから?いまいちピンと来ない。

「美香ちゃんの事件と私と交際する事がどうしてつながっているんですか?」

「立花さんのおばあ様に認めてもらう為です。黒須のせいで美香さんは亡くなったとおばあ様は今でも黒須を恨んでいる。その誤解を解くには真相を突き止める必要がある。黒須はそう考えたようです」
熱い物がまた溢れた。
私の為に黒須が事件を追っていたなんて……。
美香ちゃんの次にしか見てもらえないって僻んでいたのが恥ずかしい。

「それに美香さんは罰なんて与えませんよ。黒須の事も、立花さんの事も大切に思っていた方じゃないですか」

――春音、大丈夫だからね。美香ちゃんがいるからね。

おばあちゃん家に預けられたばかりの時、心細くて泣いていると、美香ちゃんはいつもそう言って抱きしめてくれた。

――春音と美香ちゃんはずっと一緒だよ。だって姉妹だもん。

美香ちゃんの明るい笑顔が浮かんだ。

相沢さんの言う通りだ。
美香ちゃんは私たちに罰なんて与えない。