大嫌いの先にあるもの

ホテルに着き、チェックインした後は黒須が泊まっていた部屋を見せてもらった。

部屋はシンプルな作りで、セミダブルぐらいの大きさのベッド1つと、ソファとテーブル、その前にテレビ台があって液晶テレビが置かれていた。

クローゼットを開けると、黒須のスーツが2着かかっている。その脇には黒いスーツケースが仕舞われていた。

黒須が部屋にいた形跡を目の当たりにして、胸が苦しくなる。荷物はあるのに本人がいないなんて、悪い夢を見ているみたい。

でも、落ち込んでいる場合じゃない。手がかりを見つけなきゃ。
目の前のスーツの上着のポケットに手を突っ込むと感触があった。

何か入っている。
ポケットから手を出してみると、カードの束があった。

「相沢さん!」

ベッドの側にいた相沢さんの所まで行き、カードの束を見せた。

「これを見て下さい」

相沢さんがカードの束を掴み、じっと書かれている文字を見た。

「どこにあったんですか?」
「黒須のスーツのポケットに。これ何ですかね?」

相沢さんが考えるようにカードを一枚、一枚めくっていく。

「店の名前と住所ですね。住所は全てウエストハリウッドですね」

相沢さんがハッとしたように顔を上げた。