「黒須が行方不明って、どういう事ですか?」

相沢さんが困ったようにため息をついた。
ここはBlue&Devilの相沢さんの事務所。今日黒須が帰ってくるから、来てみれば深刻な事態になっている。

「連絡が取れないんです。現地の人間の手を使って捜索させていますが、滞在先のホテルにはまだ黒須のスーツケースが残ったままで、本人だけがどこにもいない状態です」
無表情な相沢さんが眉間に皺を寄せ、珍しく焦ったような表情を浮かべている。

メッセージを送っても、留守電を残しても、連絡がなかったのはそういう事だったんだ。てっきり仕事が忙しいのかと思っていた。

両足から力が抜けそうになった。崩れ落ちそうになる体を支えるようにソファの背に手を突いて、必死でこらえる。

今は倒れている場合じゃない。

「いつから連絡が取れないんですか?」
「三日前に連絡をもらったのが最後でした。デヴィッドを知っている人物に会えたとメールをもらいました」
「デヴィッドって何の事です?」

相沢さんがしまったというように息を飲んた。

「私に何か隠しているんですね?」

相沢さんがさらに追い詰められたような表情を浮かべた。