大嫌いの先にあるもの

「クロス、車の運転できる?」
バーから出るとキャサリンに聞かれた。

「できるが」
「じゃあ、運転してくれない?あたし、疲れちゃって寝たいのよね」
「デヴィッドの所に連れて行ってくれるならいいが」
「ちゃんと連れてくわよ。車はこっちよ」

バーの裏手にLEXUSの黒いSUV車が停まっている。
キャサリンが高級車に乗っている事に少し驚いた。

「クロス、これ」
キャサリンが黒い物体を投げて来た。
キャッチすると、車のスマートキーだった。
どうやら本気で僕に運転させるらしい。こっちがハンドルを握った方がまだ安全か。

「どこに行けばいい?」
運転席に座り、助手席のキャサリンを見た。

「ラスベガス」
「はあ?」
「はあ?じゃないわよ。早く行って。道がわかんなかったらナビ使えばいいから」
 エンジンをスタートさせ、ナビをセットした。
 ラスベガスまでは270(約434キロ)マイルあるらしい。

 ナビによると目的地までは4時間半のドライブのようだ。
 今は夜の9時半だから、到着は深夜2時頃か。完全に夜中のドライブだな。

「デヴィッドはラスベガスにいるのか?」
「そうよ。早く出して」
「わかった。出すよ」
アクセルを踏み、車を発進させた。