大嫌いの先にあるもの

「痣?」

若菜が整った眉を上げた。

「うん。生まれつきのなんだけど。左胸の下に拳大ぐらいの大きさのがあって……」

みんなと違うって気がついたのは小学校の修学旅行だった。お風呂に入っていたら、変なのがついてるって、クラスの女子に言われた。みんなの体を見たらそんな物はなく綺麗な肌だった。

物凄くショックだった。自分が醜い生き物のような気がして。

それ以来、修学旅行の時は生理だと言って、みんなとはお風呂に入らないようにして来た。

「血管腫ってやつ?」

ゆかが言った。

「うん。それ。皮膚科で見てもらった時にそう言われた。良性の物だから病気の心配はないんだけど、消えないって」

「でも、レーザー治療で消えるらしいよ。従兄が首に大きな血管腫があって小学生の時にレーザーで消したって言ってたよ」

ゆかの話に頷いた。

「レーザー治療の話は知ってる。高校生の時、調べてみたら私のは深いから、レーザーでは消えないって言われたの。手術する必要があるんだって。おばあちゃんにそこまでする必要はないって反対されてからそのままなんだよね。私自身も体を切る事に抵抗があったから、おばあちゃんの意見に従ったんだ」

「そっか」

ゆかがため息とともに相槌を打った。

「この痣を見られるのが怖いんだよね。自分で見ても気持ち悪いって思うから、きっと彼も……」

若菜がいきなり立ち上がって、私の隣に来た。

「見せて」

若菜の言葉にびっくり。

「私が気持ち悪いかどうか判断してあげる」

そう言って若菜が私のTシャツの襟をつかんだ。