大嫌いの先にあるもの

「何?」
言われるまま一つ席をつめて、隣に移動した。

「両手出して」
 黒須の前に両手を差し出した。その手を大事そうに黒須が握ってくれる。温い体温が伝わって来て、何だかドキドキする。

「目を閉じて」
「うん」
 目を閉じると、黒須が箱のような物を私の手に掴ませた。

「いいよ」
目を開けると、一目でティファニーだってわかる、白いリボンがかかったティファニーブルーの小箱が手の中にあった。

ドキッ……。

まさか今日、黒須もティファニーに行ったの?

「プレゼントだよ。開けてみて」
あまりの事に指先が震えそうになる。動揺しちゃダメだ。六本木ヒルズにもティファニーは入っている。きっとそこで買ったんだ。わざわざ銀座まで来るはずない。きっと大丈夫。

「う、うん」
小箱を膝の上に置いて、ゆっくりとリボンを解き、箱を開けるとオープンハート型のネックレスが出てくる。

まさに今日、銀座のティファニーで私が見ていたものだ。
なんでこれを……?

黒須に視線を向けると、さっきまでの楽しそうな表情は消え、悲しそうな顔をしていた。

「春音、今日はどうして銀座にいたの?」
視線が合うと、黒須は小さな子供に聞くようにゆっくりと口にした。