大嫌いの先にあるもの

「アクセサリーですか」
「春音ちゃん、行こう」
奏太さんが急に左手を強く引っ張った。
あっという間にティファニーのお店の中。

お店の前を通った事は何度かあったけど、入ったのは初めて。
大理石の白っぽい床に、エスカレーター脇にあるターコイズブルーの壁以外は白い壁が続いている。それがお洒落というか、高級感があって圧倒される。

店内にはカップルが3組いて、幸せそうな雰囲気が出ている。恋人になると、こういう所でプレゼント買ったりするのかな。

「春音ちゃん、こっち」
奏太さんに手を引っ張られてショーケース前まで行くと、オープンハート型のネックレスが目につく。

アクセサリーに興味はないけど、目の当たりにするとキラキラと輝くダイヤにテンションが上がる。

デザインもシンプルで可愛い。

「春音ちゃん、気に入ったのある?」
奏太さんに聞かれて、正直にオープンハート型のネックレスを指すと、店員さんに声をかけたからびっくり。

「これ見せて下さい」
慣れた感じで奏太さんは黒スーツの女性店員にお願いした。

「こちらですね」
店員さんがショーケースを開けてくれ、目の前にネックレスを置いてくれた。
ゴールド色のハートには小さなダイヤが三つ付いていた。

「こちらは18kゴールドになります。ダイヤはラウンドブリリアントカットになっております」
ラウンドブリリアントカット?
店員さんが説明してくれるけど、外国語を聞いているみたい。
でも、綺麗だな。

「春音ちゃん、つけてみたら?」
奏太さんの言葉にまた驚いた。つけたらきっと欲しくなる。さすがに10万円以上するネックレスなんて貧乏学生には買えない。

「着物だし、合わないので」
「それもそうか」
奏太さんが可笑しそうに笑った。

「じゃあ今日の記念にプレゼントするよ」

えっ!
いくらなんでもプレゼントされる訳には……。

「いらないです!」
全力で拒否した。可哀想な子犬みたいな顔をされても、絶対に受け取る訳にはいかない。もし買ってもらえるとしても、こういう物は黒須(恋人)以外からは受け取りたくない。