「あとは若い者同士で」
夏目社長とお父さんはそう言って、私と見合い相手の夏目奏太さんを残して帰った。
「あとは若い者同士でって、一緒にされて春音ちゃん迷惑だよね」
隣に立つ、奏太さんが人懐こそうな笑顔を浮かべた。紺色のスーツを着ているけど、25歳には見えない。奏太さんは童顔で、可愛い顔立ちをしているから、大学生ぐらいに見える。
「いえ」
「ごめんね。親父が失礼な事ばっかり言って」
すまなそうに奏太さんが栗色の眉を下げた。
「えっ」
「嫌だったでしょう。お母さんの事をずっと言われて」
奏太さん、わかってくれていたんだ。
「そんな事は……」
「無理しなくていいよ」
にこっと笑った顔にほっとする。
この人、いい人かも。
でも、このお見合いは断らないと。
私には黒須がいるんだから。
「お詫びにケーキをごちそうさせてよ」
「ケーキですか?」
「春音ちゃん、甘いの嫌い?」
「いえ」
「じゃあ行こう。とっておきのお店に連れて行ってあげるよ」
「あの、でも、もうお腹いっぱいで」
本当は嘘。早くこの場を後にしたい。
「全然、食べてなかったのに?」
母の事を言われてからはほとんど料理に手をつけてなかった。
私のお皿、気にしてくれてたんだ。
「あの、着物着てると、胃が締め付けられちゃって……」
「早く帰りたい?」
また思っている事を言い当てられた。そんなに私ってわかりやすいのかな。
夏目社長とお父さんはそう言って、私と見合い相手の夏目奏太さんを残して帰った。
「あとは若い者同士でって、一緒にされて春音ちゃん迷惑だよね」
隣に立つ、奏太さんが人懐こそうな笑顔を浮かべた。紺色のスーツを着ているけど、25歳には見えない。奏太さんは童顔で、可愛い顔立ちをしているから、大学生ぐらいに見える。
「いえ」
「ごめんね。親父が失礼な事ばっかり言って」
すまなそうに奏太さんが栗色の眉を下げた。
「えっ」
「嫌だったでしょう。お母さんの事をずっと言われて」
奏太さん、わかってくれていたんだ。
「そんな事は……」
「無理しなくていいよ」
にこっと笑った顔にほっとする。
この人、いい人かも。
でも、このお見合いは断らないと。
私には黒須がいるんだから。
「お詫びにケーキをごちそうさせてよ」
「ケーキですか?」
「春音ちゃん、甘いの嫌い?」
「いえ」
「じゃあ行こう。とっておきのお店に連れて行ってあげるよ」
「あの、でも、もうお腹いっぱいで」
本当は嘘。早くこの場を後にしたい。
「全然、食べてなかったのに?」
母の事を言われてからはほとんど料理に手をつけてなかった。
私のお皿、気にしてくれてたんだ。
「あの、着物着てると、胃が締め付けられちゃって……」
「早く帰りたい?」
また思っている事を言い当てられた。そんなに私ってわかりやすいのかな。



