「ナツメ楽器って知ってるか?」
有名な楽器メーカーの名前にびっくり。

「知ってるよ。テレビのCMとか見るもん。私、ナツメ音楽教室でピアノ習っていたし。えっ、まさか、そこの社長さんなの?」
「そうだよ」
お父さんがちょっと得意げな顔をした。

えー!これから会うのはそこの御曹司って事?

「凄い!そこの社長さんと知り合いなんて!」
「偶々仕事で知り合ってな。お父さん、ナツメ楽器の広告を担当しているんだよ。知ってるか?最近テレビのCMで流れている猫がピアノ弾くやつ」

「うん。知ってる。白猫がピアノを弾いてお姫様に変身するやつでしょ」
「実は、お父さんのチームが作ったCMなんだよ」
またまた意外。お父さんって結構目立つ仕事しているんだ。
広告代理店の会社にいるのは知っていたけど、仕事内容までは知らなかった。

「社長さんがそのCM気に入ってくれてな。それで仲良くしてもらってるんだ。でな、春音の話をしたら是非、会ってみたいと言ってくれたんだ」
一体どんな話をしたんだろ?私なんてつまんない子なのに。

「お連れ様がお見えです」
さっきのウェイターさんが個室に入ってきた。