「く、黒須、ひ、人が見てるよ」
腕の中で春音があたふたし出すが、がっちりと春音をさらに抱きしめた。一週間も離れていたんだ。これじゃあ足りない。人が見ていようがどうだっていい。

「ねえ、黒須……」
困ったような視線と合い、息が止まりそうになった。
愛しさに胸が潰れそうになる。

春音に会いたくて堪らなかった。
だけど、会いに行けなかった。この気持ちが何なのかわからなかったから。

やっとわかった。
これは、やっぱり恋だ。

16歳も年下の春音に情けない程、心を掴まれている。
心臓が脈打つごとに春音を好きだと言っている。

美香との恋が人生で最後だと思っていたのに。
またこんな気持ちになるなんて……。

「どうしたの?」
不安そうに春音がこっちを見上げた。
美しい焦げ茶色の瞳に吸い寄せられるように顔を近づけると、瞳が驚いたように大きくなった。

鼻先が触れる距離で見つめ合い、それから薄ピンク色の唇にキスをした。