「まさかキスしたんですか?」

相沢に聞かれた。

「うん」

頷いた。

呆れたように相沢がため息をついた。

「だから言ったじゃないですか。黒須は春音さんを可愛がり過ぎるって。いつかこんな事になるんじゃないかと心配していましたが。もう妹なんて言えませんよ。兄として完全にアウトです」

……アウト。

その言葉が胸をえぐる。
自分でもわかっている。さっきの僕は保護者として完全にアウトだった。

「春音さんとキスをして、それで動揺してこんな遅い時間に私の所に来た訳ですね」

「他に相談できる人間が浮かばなかったんだ」

「どうするんですか?春音さんはずっと黒須に恋心を持っているんですよ。その場のノリだけでしたキスなら許せませんよ」

「僕は今でも美香を愛している。それは間違いないんだ」

「春音さんの事は遊びって事ですか?」

遊びって言葉がつき刺さる。

「違う」

「じゃあ、何ですか?女性として好きなんですか?」

自分でもその辺がよくわからない。

春音の事はずっと妹だと思って接して来たから。

「わからない」

「酷い人だ。よくわからないままキスするなんて。やっぱりその場の空気に流されてキスしただけですね」

「違う。そうじゃない。春音の事が愛しかったんだ。それが妹としてなのか、女性としてなのかはわからないが、とにかく春音の泣き顔を見ていたら愛しさが込みあがって来て、それで気づいたら」

「キスしてた訳ですか」

「二度キスをした」

相沢がため息をついた。