大嫌いの先にあるもの

「お、おばあちゃん……」

カウンター席に腰を下ろしたおばあちゃんが珍しそうにこっちを見ていた。
昼間見たのと同じ半袖の水色カットソー姿で、昼と違うのは胸元に真珠の長いネックレスがあった事。

見覚えがある。私がおばあちゃんにプレゼントしたやつだ。
偶にはお洒落しなよって言って。

おばあちゃん夜のお店だからお洒落して来たんだ。
身に着けてくれたのは嬉しいけど、それよりもハラハラする。

「バーっていうから狭い店だと思っていたけど、ここは広いね。客も多いし。春音がいる所を見つけるのに苦労したよ」

おばあちゃんが疲れたというようにため息をついた。

「喉乾いたね。お茶はないのかい?」

「えっ、お茶……えーと。うん。ウーロン茶でいい?」

「それでいい。それにしてもジャズっていうのは騒がしいね」

おばあちゃんがステージの方に視線を向けた。

マズイ。黒須がいる。