大嫌いの先にあるもの

アパートの事、おばあちゃんに言ってなかった。
黒須の所にいるとは言えなかったから。美香ちゃんの事でおばあちゃんは今でも黒須を憎んでいる。

「えーと、あの……」

「春音は今、どこに住んでいるんだい?まさかネットカフェで寝起きしているんじゃないだろうね?」

おばあちゃからネットカフェって言葉が出て来たのが意外。そういう場所がある事、知っているんだ。

「ネットカフェじゃないから。あの、大学の友達の所」

「迷惑じゃないのかい?」

「その子、一人暮らしだから大丈夫」

「そう思っているのは春音がだろ。家に帰って来なさい」

「大丈夫だって。その子の所で」

「まさかその友達って男じゃないだろうね?」

アイスウーロン茶に咽た。男の人と、しかも黒須と暮らしているなんて言ったら、絶対に連れ戻される。

「まさか。そんな事ないよ。女の友達」

「じゃあ、その友達に今すぐ電話をしてちょうだい」

「なんで電話するの?」

「春音が世話になっているんだから挨拶しないとね」

「あの、でも、今は彼女、バイト中だから電話に出ないよ」

「バイト中って事は今は留守にしてるって事かい?」

「うん」

「それなら友達の家に案内しなさい。春音がどこで生活しているか知っときたいんだよ」

なんでそうなるの?おばあちゃん、手ごわい。どうしよう……。