大嫌いの先にあるもの

滝本さんと一緒にランチからDVD屋に戻って来ると、レジカウンター前におばあちゃんがいた。

心臓が飛び出るぐらいびっくりした。

なんでおばあちゃんがお店にいるの?

「立花さん、良かった」

おばあちゃんを応対していた店長がこっちを見た。
おばあちゃんもゆっくりと丸顔をこっちに向けた。

いつもは穏やかなおばあちゃんが険しい表情を浮かべている。
何があったの?

まさか黒須と一緒に暮らしている事がバレた?

「立花さん、なんか大事な話があるみたいだよ。裏の事務所使っていいから。ここだと、ちょっとね」

店長が困ったように太眉を下げた。
おばあちゃんが邪魔になっている。早く連れ出さなきゃ。

「あの、少し出てきてもいいですか?」

「大丈夫だよ」

店長が頷いた。

「おばあちゃん行こう」

おばあちゃんがむっつりしたままついて来た。

出て来たばかりだけど、またファミレスに入った。
今度はドリンクバーが近い席になった。

黙ったままのおばあちゃんの分もドリンクバーを頼み、アイスウーロン茶を二つドリンクバーから取って来て、自分とおばあちゃんの前に置いた。

テーブルを挟んだ向かい側に座るおばあちゃんはまだ怖い顔をしている。

「急におばあちゃん、どうしたの?電話くれれば良かったのに」

おばあちゃんが深いため息をついた。

「春音の電話はいつも留守電だからね」

「ごめん。バイトが忙しくて」

「だからバイト先まで来たんだよ」

おばあちゃんがバックから封筒を取り出して、私の前に置いた。

それは大学からの郵便物だった。
住所が解体されたアパートになっている。

「宛先不明で戻って来たと春音の大学から連絡が来てね」

おばあちゃんがじっとこっちを見た。

「さっき春音のアパートに行って来たけど、建物がなくなっていたよ。どういう事なんだい?」