昨夜の記憶を思い出そうとしたら、ガンガンと額の奥が痛くなる。これは飲み過ぎた次の日になるやつだ。

「二日酔い?」

頭を抱えていると、ベッドから起き上がった黒須に聞かれた。

「うん。でも昨夜、そんなにお酒飲んだっけ?」

「覚えてない?バルコニーで一緒にビール飲んだの」

「そういえば、なんか、そんな気が」

「あっという間にビールを飲んでしまって、それでもっと飲みたいってキッチンから春音がワインとウィスキー持って来たんだよ」

その辺の記憶がない。

「僕は止めたよ。次の日も鈴原先生の所で引っ越し作業があるって聞いたから。でも、春音、全然言う事聞かなくて」

黒須がため息をついた。

引っ越し……。
今日は8時に鈴原先生と待ち合わせたんだった。

「今、何時?」

黒椅がサイドテーブル上の置時計を見た。

「うーんと、7時半」

「もうそんな時間!遅刻する!」

ベッドから飛び起きた。

いたっ。何これ、物凄く頭が痛い。

立っていられず、頭を抱えてベッドの上でうずくまった。

「いきなり動くからだよ。ちょっと待ってて、今頭痛薬取ってくるから」

黒須が寝室から出て行った。
その瞬間、気が抜けた。

びっくりした。
あんな夢見た後に黒須が出てくるなんて、心臓に悪すぎる。

でも、どこから、どこまでが夢だったんだろう?