大嫌いの先にあるもの

「お疲れ」

黒須がカチッと私の手の中の缶ビールと乾杯してから、気持ち良さそうにビールを飲んだ。ゴクッと大きく喉仏が上下するのを見て、またドキドキ。どうして黒須は魅力的なんだろう。もう心臓が壊れそうなぐらいドキドキしてる。

「うまいな。夏のビールは」

ビールのCMが出来そうなぐらい、爽やかな笑みを黒須が浮かべた。ときめきセンサーが反応するから、そんないい顔見せないで欲しい。

「飲まないの?」

黒須がこっちを見たから、慌ててビールを飲んだ。
良く冷えていて美味しい。

「美味しいね」

「実は宮本君からもらって来たんだよ」

「バーに行ったの?」

「春音がいると思ってね。今日は休みだったんだな」

「うん。引っ越しのバイトがある今日と明日は休みにしてもらっていたの」

「鈴原先生の研究室の引っ越しだったかな?」

「なんで知ってるの?」

「鈴原先生から聞いていたからね。春音が手伝うって」

「まさか黒須との関係は話してないよね?」

黒須が口の端を上げ、クスっと笑った。

「何?その笑い」

「僕との関係、そんなに隠したい?」

黒い瞳が真っすぐにこっちを見た。私の心の中を探るようにじっと見つめられ心臓がきゅうっとする。黒須が隣に座ってから、ほんの10分ぐらいしか経ってないのに今夜はドキドキする事が多い。