走り出した2歩目で転んだ。
ヒールのあるサンダルのせいだ。

「お客様、大丈夫でございますか?」

床にうずくまっていると、店長に声をかけられた。
恥ずかしい。

何やっているんだろう。
自分が情けない。

黒須にも恥をかかせちゃったよね。
もしかしたら呆れている?

今日の私、少しもいい所ない。
一番黒須には情けない姿、見せたくないのに。

泣いちゃいけないと思うけど、朝からいろんな事がありすぎた。

目頭が熱い。喉の奥に熱いものが込みあがってくる。

もう限界。

次の瞬間、いきなり体が浮かんだ。
足と背中にしっかりと私を抱える腕を感じる。

私、お姫様だっこされているの?

「怪我はない?」

心配そうな黒須の顔が近くにあった。
黒須に担ぎあげられたんだ。

いつもだったら抵抗するけど、小さな子供のように黒須にしがみついた。
世界で一番安心できる場所はそこしかない気がして。