大嫌いの先にあるもの

私の荷物は黒須の家の空き部屋に運ばれた。

日当たりのいいキャラメル色のフローリングの部屋で、前の所の2倍以上の広さがありそう。床はピカピカに磨かれているし、白い壁にはシミ一つなくてきれい。新築物件みたい。

本棚用に使っていた3段のカラーボックスと折り畳み式のテーブルが急に小さくなった気がする。

ウォークインクローゼットも付いていて、押し入れケース2個と、布団を仕舞っても半分以上空間があいているのが信じられない。前の部屋では荷物を増やさないように苦労したけど、ここにいると増えてしまいそう。

気をつけなきゃ。ここにいるのは次の部屋が見つかるまでの間なんだから。

それにしてもベランダも何て広いんだろう。椅子とテーブルが置けそう。前の部屋の狭くて古いベランダとは大違い。5階だから遠くまで見えるし、東京タワーもよく見える。こんな都会の真ん中に住めちゃうなんて……。

築40年のアパートとは別世界。

こんな贅沢な部屋に住んでいいんだろうか。
家賃はいくら払えばいいんだろう。

だんだん心配になってくる。

「片付けは終わった？」

黒須が部屋に入って来た。