大嫌いの先にあるもの

「立花さんは異議申し立てしませんでしたよね。つまり同意したって事ですよ」

「こ、こんなの知りませんよ」

「そんな事言われても、ちゃんと書類はお渡ししてありましたから」

「住人の権利がちゃんと保障されているはずです。こんなの違法です」
おじさんはさらに用意していた書類を見せた。

「これは賃貸契約書になります。ほら、最後の所に書いてあるでしょ。この物件は二年後に解体が決まっていますって。立花さんのサインがありますから、その事に同意した上で契約した事になっているんですよ」

確かに、アパートを借りる時に書いた契約書だった。最後の所に小さく解体の事が書いてある。でも、契約した時はその文言に気づかなかった。

そうか。敷金礼金もなく、更新料もなかったのは解体する事が決まっていたからなんだ。

ただ安ければいいと安易に飛びついたのがいけなかった。
このアパートは訳アリ物件だったんだ。

二年後に気づくなんて、なんてバカなんだろう。