大嫌いの先にあるもの

「何か?」

リムレス眼鏡越しの瞳と合った。

相変わらず無表情で何を考えているのかわからない。

「い、いえ。あの、シフト大丈夫です」

「私は目の保養ですか」

話題が戻った。気まずい。

「すみません。変な事言いました」

「立花さんに楽しんで頂けて光栄ですよ」

言葉は穏やかだけど、やっぱり無表情。怒っているのか、呆れているのか、何とも思っていないのかわからない……。

相沢さんの手がこっちに伸びた。何をするのか見ていると、私が置いた紙パックのオレンジジュースを掴んで、飲み口にストローを差した。あれ?私にくれたんじゃないの?

「どうぞ。喉が渇いているでしょう」

紙パックを差し出された。私に飲ませる為にストローを差したのか。なるほど。ストローまで差してくれるなんて意外と相沢さんは親切なのかな。

「いただきます」

受け取ったオレンジジュースを口にした。まだ冷蔵庫の冷たさが残っていて、心地いい。甘酸っぱい感じも疲れが取れそう。久しぶりにほっとした気がする。美味しくてあっという間に紙パックは空になった。

さてと、シフトの確認も終わったし、ジュースも飲んだし、そろそろ帰ってもいいよね。

ちらっと相沢さんの方を見ると、バッチリと視線が合った。相沢さんは逸らす事もせずじっとこっちを見ている。気まずくなって私から視線を外した。それでもまだ視線を感じる。

なんで相沢さん、見ているの?ひょっとしてジュースの飲み方が変だった?それとも何か話があるとか?

「あの、何か?」

「私を避けていますね。なぜ?」

相沢さん、気づいていたんだ。

黒須に片思いしている事を気づかれていそうだからとは言えないな。本当に私が片思いしている事を知ったら絶対に黒須に言いそう。

誤魔化さなきゃ。
この恋心は黒須には秘密なんだから。