大嫌いの先にあるもの

店は午後3時過ぎぐらいからお客さんが増える。
今日は土曜日だから家族連れが多い。
 
子ども連れの中年のおじさんがレジに来た時に事件は起きた。
会員証をスキャンするとレジ画面が真っ赤になり、延滞がある事が表示された。
 
今朝、見つけたやつだ。会員番号と名前を書いていたので記憶にあった。滝本さんが催促の電話をする事になっていたけど、電話を受けて払いに来てくれたんだろうか。

「あの、お客様、延滞料金がございますが」

穏やかな表情をしていた男性の表情が一気に険しくなる。
この瞬間がいつも嫌だ。

「延滞?これから借りるのになんで?」

会員証の他にこれから借りるアニメのDVDもお預かりしてあった。

「いえ、あの、前回にお借りになった作品が延滞になっていたようです」
「何借りたんだっけ?」

レジ画面に当然、タイトルが表示されているけど、それは明らかにアダルト作品で、お子様連れのお客様に言っていいものか悩む。

「あの、大人の作品のようです」

いろいろと考えてそう答えた。
おじさんはその瞬間、背筋がぞくっとする気持ちの悪い笑みを浮かべた。

「大人の作品って何?」

この人、知ってて聞いてるんだ。こっちが困るのを見て楽しんでるんだ。

「えっ、だからその……大人の作品です」
「タイトルは?ハッキリ言ってよ」
「えっと、ですから……」
「言ってくれなきゃ、延滞料金は払えないな」

おじさんの嫌らしい笑みに不愉快さが増した。殴ってやりたい。
拳に力が入った時、おじさんの方に背の高い男が近づいて来た。

「若い女の子にわざわざタイトル言わせるなんて、変態ですね」

おじさんも私もその言葉に目が点となった。