大嫌いの先にあるもの

一号棟のビルを出ると、学食がある建物に向かう学生たちの群れがあった。その流れに逆らうように正門に向かった。

スマホを見ると、もう12時40分。
黒須と離れてから30分は経ってる。

まだ待ってるかな?それとも、もう食べ終わって帰っちゃった?
お蕎麦って出てくるのも、食べるのも早いよね。
この間、黒須が頼んでいたのざるそばだったし。

今更行っても遅いかな。

でも、黒須に会いたい。

全力でダッシュした。

一生片思いだってわかってるけど、これ以上近づかない方がいいって思うけど、会いたい。

パーティーの日から黒須の事が頭から離れない。

タキシード姿の黒須とか、池に落ちそうになったのを助けてくれた事とか、手をつないで歩いてくれた事とか、一生妹だと思ってるって勝手な事言われた事とか……。

パーティーから帰って来てからは月曜日の試験を忘れるぐらい黒須に腹を立ててた。
今まで優しくしてくれてたのは妹だからなんだ。所詮、私は美香ちゃんの付属品なんだって思ったら怒りでいっぱいになった。

もう二度と黒須になんか関わるもんかって思ってたのに、黒須を遠ざけられない。会いたくて堪らなくなる。

前はここまで酷くなかった。ちゃんと距離だって取ってたし……。
悪化しちゃったな、この病気……。

正門を出て、商店が並ぶ通りを走った。

あった。お蕎麦屋さんだ。