月曜日の二限、相変わらず黒須の講義は女子学生が多い。講義が始まる五分前には全席が埋まってる。

履修してるのは百人程度のはずだけど、教室には倍の人数がいそう。しかも前列には派手な格好の女子が多い。黒須の注意を引きたいのかもしれない。

まあ、別にいいんだけど。私は後ろの列でも構わないし、黒須目当てじゃないし。ただ静かに講義が聞きたいだけ。

「春音ちゃん、どうしたの?眉間に皺が出来てるけど」

隣に座ってる若菜に指摘される。
前列の女子たちから視線を外し、若菜を見た。水色のひらひらカットソーが女子って感じがする。若菜はいつもお洒落だな。

「ちょっと前が見づらくて、目を細めてたの」

若菜が驚いたようにくりくりの瞳を見開いた。

「春音ちゃん、近眼だったっけ?裸眼で1.2あるって前に言ってなかった?」

一年生の頃、自慢げに言ったことがある。若菜、覚えてるんだ。

「なんか今日は目がかすんでて」

「大丈夫?目薬さす?」

若菜が鞄をごそごそし始めた。

前の女子がムカついて見てたとは言えないな。黒須の事意識してるみたいに思われたら嫌だし。

「今治った。なんかゴミ入ってたみたいで取れた」

「そうなんだ。良かった」

若菜が安心したように微笑んだ。

「あーもうダメだー!」

若菜の隣のゆかが突然叫んだ。

「どうしたの?」

若菜と一緒に聞いた。

「今から試験だよ。若菜と春音は余裕だね。私、土日バイトで全然勉強できなかったんだ」

試験!そうだった。今週から試験ウィークだった。

土曜日に黒須に連れて行かれたパーティーの事ですっかり頭から飛んでた。

ヤバッ。

そう思った時、教室の前の扉が開いて黒須が入って来た。