「別に寂しいとか、ショーンみたいに感情的になってる訳じゃない。ただ、サラに触れていたいだけだ。」

カイルの膝の上に座っている状態が、何とも言えず恥ずかしいが、しばらくこのままでいようとサラは思う。

「俺はずっと親もいなければ兄弟もいない、帰る場所は何処にも無いと思って生きて来た。自分の価値は、戦いの戦場の場だけにあるとまで思っていたから、それでよかったんだが。
平和になりつつある世の中に、俺の居場所はもはや無いとまで。そんな時にサラに会って、サラの側に居たいと思った。」
サラはこくんと頷く。

「出来ればこの先ずっと、サラの側に居たい。俺の帰る場所はサラの隣りだ。そう思って良いだろうか?」

「もちろんです。カイル様がいない人生なんて考えられないですから。」

「ありがとう。俺に会いに来てくれて。」
カイルはぎゅっとサラを抱きしめて、幸せを噛み締める。

「私こそ、ありがとうございます。
私の側にいる事を決めて下さって。
ショーン団長には申し訳なく思ってしまいますが…。」

「あいつは大袈裟なんだよ、大丈夫だ。
今頃ケロッと仕事してるから。」
笑いながら、サラの頬に手を当てて愛おしそうに撫でる。
「今はただ、サラを堪能したい。」

そう言ってカイルはサラに長い長いキスをした…。

「サラ…邸宅に今夜帰ったら、抱きたい。」
えっ……、サラの思考回路が止まってしまう。
固まったままのサラを見て、

「もう一度行った方がいいか?
サラを…」
「わ、分かりました。」
急いでカイルの口を両手で塞ぐ。サラはキョロキョロ周りを伺い他人の目を気にする。

「無理強いするつもりは無いが、無害な男だと思われても困る。俺を兄ぐらいに思っていないか?」
サラはぶんぶんと首を横に振る。

「突然の事で心の準備が…。」

「じゃあ、帰るまでに心の準備とやらをしてくれ。」
サラは困った顔でカイルを見上げる。

「そんな顔しても可愛いだけなんだが。」

「カイル様は時々意地悪です…。」
カイルは笑いながらサラの額にキスをして、

「じゃあ。弱ってる俺を癒やしてくれるか?」

「…全然、弱っているようには思えません…。」
ハハッと笑ってサラを抱きしめる。

「ブルーノの荷物をハクに移すから、ブルーノに一緒に乗ってもいいか?」

どうしても一緒に乗りたいらしいカイルを可愛い人だなぁと思って、サラもくすくす笑う。