怖くて勢い余って新さんに抱き着いて……まさか、こんなことになるとは考えていなかった。

 眼鏡は落としたせいでつけていない。ウィッグもさっきずれて、動いた拍子に取れてしまった。

 そんな漫画みたいなことが、本当に起こってしまうなんて……。

 でもその時、はっと自分の状況を確認する。

 だけどとりあえず、私は柊木栞だってことを言わなきゃ……!

「はいっ!柊木栞です……っ!」

 新さんはそんな私の声に気付き、はっと我に返った。

「本当に、栞なのか……?」

「は、はいっ……!本当、ですっ……!」

 暗闇の恐怖も焦っているのか、どこかに消えてしまった。

 そんな時、新さんがウィッグの存在に気付いたのか私の後ろを覗き込んだ。

 はっ……そうだ。新さんにちゃんと説明しないと……。

「あの、新さん……。」

「いや、今は何も言わなくていい。とりあえず帰るぞ。」

 新さんは動揺しているのか、言葉が少しおぼついていない。

 私は慌ててウィッグと眼鏡を回収し、急いで付け直した。

「……やはり、栞だな。」