「あっ、そうだ。……柊木さん。」

「はい?」

 会長さんは扉を開けてから何かを思い出したように、私を呼び止めた。

 ん?何だろう……?

 そう思っていると、会長さんは私にこそっと耳打ちしてきた。

「会長さんじゃなくて、名前で呼んでくれない?堅苦しいの好きじゃなくて。」

 会長さんはそう言って眉の端を下げている。

 うーん、会長さんだから会長さんだけど……名前で呼んだほうが良いのかな?

「じゃあ……天さんって呼んでも良いですか?」

「うん、それでいいよ。僕も君のこと栞って呼ぶから。」

 会長さん、もとい天さんは一瞬だけ悪戯っ子のような表情を見せて、私を今度こそちゃんと生徒会室に帰してくれた。

 天さんはまだ、さっきの部屋に用があるのかまた入ってしまったけれど。

 でも気にすることでもないかなと思い、私は自分の席に戻って確認作業を再開した。