「昨日ね、言いたいこと言えなかったから……今言っても良い?」

「は、はい。大丈夫ですよ?」

 言いたい事って何だろう……?

 頭の中にはてなマークを浮かべ、首を傾げてしまう。

 それと同時に来栖さんはゆっくりと口を開いて、私の目を見つめてから勢いよくこう言った。

「僕のこと……下の名前で呼んでっ?」

「へっ?下の名前って……。」

 来栖さん、じゃなくて風羽さんって呼んでって事……?

 どうして急にそんなこと……。

 一瞬そう思い、不思議に思ったけどある可能性が不意に頭に浮かんでくる。

 来栖さんも、私と仲良くしてくれようとしてるのかな……?

 来栖さんの意図は分からないけど、そうだったら私も嬉しい。

 私はそう考えて、大きく頷いてみせた。

「えっと、じゃあ風羽さんって呼んだらいいですか?」

「!……もちろんっ!ありがとう、神菜っ!」

「ふ、風羽さん……!な、名前は偽名のほうでお願いしますっ……!」

 人がいないとはいえ、こんな事を誰かに聞かれたら一大事になってしまう。