「来栖さん、タオル貸してくださってありがとうございましたっ!失礼しますねっ。」

「……あっ、神菜っ……。」

 僕が神菜を呼ぶ前に、パタンと静かに閉まった扉。

 その扉を見据えながら、無意識に頬を緩めてしまった。

 口元に手を当てて、はぁ……とため息を吐き出す。

「神菜、可愛すぎ……。」

 こんなところで神菜に会えたのは、本当に奇跡だ。

 できる事なら四六時中傍にいたいし、僕だけを見てって言いたい。

 でも、そんな事できないのも、僕が手を出せないのも分かってる。

 だけど……手を伸ばせばすぐに触れられる距離に神菜がいると分かると、もうそれだけで十分な気がした。

 これからもっともっと頑張って、神菜に好かれるように努力しよう。

 ……神々を越えられるように、かっこいい男にならなくちゃ。

 僕は一人になった部屋で拳を握りしめ、ふっと微笑みを洩らした。