『今からいろんな魔術を試していくからね!リクエストも良いよ!』

 あの日……風羽があの人間を殺しかけた時の記憶が、色褪せないまま頭の中に焼き付いている。

 本当は俺が、あーなる前に止めなきゃならなかった。俺が風羽を、抑えなければならなかった。

 だがそんな事、弱い俺にはできなかった。



 俺は昔から、感情を表に出すことが苦手だった。

 両親や一族の奴らは俺に期待をしていて、学内でもZenithの副代表としてしか見られたことがない。

 それに……いつもは仏頂面しているくせに、可愛いもんが好きなとこが嫌だった。

 ぬいぐるみやアクセサリーみたいな可愛いものやゆめかわなものを見ると、思わず手に取ってしまう。

 だけどそんなこと、他の奴らには言えるわけない。

 言ったらどうせ馬鹿にされるし、からかわれるから……ずっと黙っていた。

 それと同時に……そんな自分に嫌気がさしていた。

 何だったら俺は価値を見出せるんだ、どうしたら俺を認めてくれるんだろうか。

 ――どうして俺は、風羽を止めることができなかったんだ。