恐る恐るそう聞くと、五十嵐さんは少しの間黙ってしまったけど、すぐにこう口にした。

「ついてこい。」

「へっ?……わっ!?」

 五十嵐さんは少し不機嫌そうな表情を浮かべたまま、私の手を突然引いて強制的に連行されてしまった。

 急なことだったから素っ頓狂な声が聞こえ、階段を降りるときにこけそうになってしまう。

 というか、どこに連れていかれるんだろう……。

 五十嵐さんは前に人間を嫌いだと断言していたから、少し怖くなってしまった。

 だけど……五十嵐さんとも仲良くなりたい。

 成生さんとも皐月君とも分かり合えたんだ。きっと大丈夫。

 結構強い力で腕を引かれているのにも関わらず、私はそんな呑気な事を考えていた。



 そのまま連行されて、五十嵐さんは人目の少ない非常階段の裏で止まった。

 ここ……前に成生さんとも話したところだ……。

 でも話すってことになったら、これくらい静かで人目のないところのほうが良い。

 さっき掴まれたところは意外な事に徐々に痛くなってきて、ひりひりしている。