教室に戻る為、まだ賑やかな廊下を通り過ぎる。

 結局、理事長から何も聞けなかったな。

 運が良いのか悪いのか分からないけど、少しだけ知りたい気持ちがあった。

 だけどあの理事長、様子がおかしかった気がするんだけど……。

 そんな拭えない違和感を感じながら、足早に階段を駆け上がる。

 その時、不意に背後から名前を呼ばれた。

「柊木栞。」

「……っ!?」

 急なことで思わず驚いてしまい、階段の上で足を止めてしまう。

 この声、まさか……。

 ある人の可能性を考えながら、恐る恐る後ろを振り返る。

 そこには私の予想通り、Zenithの副代表の五十嵐さんだった。

 だけど、この前呼び出されたときみたいな、威圧的なオーラは感じ取れない。

 そんなことに気を取られ、言葉を発すことを忘れてしまう。

 でもすぐにはっと我に返り、五十嵐さんにこう尋ねた。

「な、何ですか……?」

 Zenithの皆さんのことは、もう怖くはない。

 だけど五十嵐さんとは言葉をほぼ交わしていないから、無意識に緊張してしまった。