すると創さんは安心したようにほっと息を吐いた。

「そうですか。……なら、良かった。」

「ん?創さん、今何て言いました?」

 最初の言葉は聞こえたけど、最後が声が小さくて聞こえなかった。

 気になって創さんに尋ねてみると、創さんはふふっと上品に笑みを浮かべた。

「何でもありませんよ。それより、そろそろ教室に戻ったほうが良いんじゃないでしょうか?」

「そうですねっ!だけど、理事長は……。」

 話を中断したみたいになったから、勝手に帰っても良いんだろうか。

 そう思い、恐る恐る聞いてみる。

 すると創さんは、私を安心させるようににこにこな笑顔を浮かべてみせた。

「大丈夫ですよ。父さんは長電話になるでしょうから、戻ってもらったほうが良いです。」

「……なら、分かりました。失礼しました。」

 一瞬だけ理事長には申し訳なくなったけど、私も戻らないと時間が……。

 理事長、勝手に帰ってごめんなさいっ……!

 私は心の中で理事長に謝ってから、創さんにそう言って理事長室の扉を開けて教室へと帰った。