「疾風こそ、そんな苦い表情してどうしたの~?」

 単刀直入にそう聞くと、疾風ははっとしたような表情を浮かべた。

 でもすぐにいつもの笑顔に戻り、何でもないといったように僕に笑いかける。

「いや、少し考え事してただけ。」

 疾風はそう言ってまた視線をまっすぐに直したけど、瞳は揺れているまま。

 ……もしかして疾風も、なのかな。

 なんて、僕の考えすぎかもしれないけど……つい、考えちゃう。

 今まではしーちゃんのこと、大事な友達だとしか思わなかった。

 それはきっと、これからも揺るがないと思うし、それ以上なんて望まない。

 ……それに、新さんはしーちゃんが好きなんだから。

 あの人に勝とうなんて、何年経っても無理な話。

 そう思って自分に気持ちを抑えようと必死だったけど、結局もやもやした気持ちだけは抑えられなかった。