「昌也君、もしかしてこの女(ひと)は元カノとか?」
その女の子はなんとなく、私と昌也との間にあるただの知り合いではない空気に気付いたのだろう。
「真湖…お前…」
私の浮気を責めるような目で、私を見て来る昌也。
一夜とは何もないとは言えないので、何も言えないけど。
でも、自分だって。
「…昌也、浮気してたんだ?」
「浮気してるのは、真湖の方だろ?
この子は、ただの友達だから」
昌也はそう言って、その女の子と私を見る。
「は?何それ?
あんた、今彼女居ないような事言ってなかった?
馬鹿らしい、帰ろ」
その女の子は、昌也を突き飛ばすように押して、私達から離れて行った。
「へぇ、一応、真湖ちゃんは本命なんだ」
一夜のその言葉に、そうなのか、と思う。
特にそれが嬉しいとか安堵したような感情もなかった。
昌也は、一夜に目を向け、また驚いたように目を見開いている。
「真湖、お前、この男が誰か分かってんのか?」
「えー、変装してるのに気付いちゃった?」
一夜は、赤いフレームの伊達眼鏡を外すと、ニヤリと笑い、
「本堂巡査」
そう、口にした。
え…、昌也を、一夜は知っているの?
私は一度、この人に昌也のフルネームを言った事があるけど、
知らないと言っていた。
"―――んー、誰?それ?
そんな雑魚知らないな――"
その時に昌也の名字を覚えていたのだとしても、
昌也が現在巡査なのも知っていて。
そりゃあ、昌也はまだ若いから、巡査なのだと思ったのかもしれないけど。
でも、なにより、一夜のその話し方の感じは昌也を知っている。



