目の前の景色がぐらぐら揺れ、足元がフラフラする。


お酒は強い方ではない自覚はあったけど。


もう無理だ、と重力に従うように、地面に座り込んだ。


つい先程迄雨が降っていたからか、
地面がひんやりとして、私のついた膝を濡らす。


スカートも濡れたかも、とぼんやりと思う。



「酔ってるの?大丈夫?
こんな所で座り込んだら、服濡れるよ?」


その声と同時に、背後から両脇辺りに手を差し込まれ、強い力で上に引き上げられる。


「えっ…、ちょっと、離して!」


声は男性のもので、そうやって知らない男性に触られている事に、
慌てる。


自分の足で立ち、その手を振り払うように振り返った。


少し心配そうに、でも、笑ってこちらを見る、その男性。


あ、けっこう格好いい人だな、と思ってしまった。


私と同じ大学生くらい?と思ったけど、もうちょい上かな?


でも、平日の夜のこんな夜中に私服姿で、髪も絶対に地毛じゃないくらい茶色くて、前髪も目に掛かりそうで。


赤いフレームの眼鏡。


まともに働いてないか、夜の仕事か美容師?


こんな歓楽街に居るくらいだから、夜の仕事?


「なに?俺の顔ジッと見て?
あ、もしかしたら、俺達知り合い?」


そう言われ、え、と思うけど。


言われてみると、この男性の顔を見た事あるような気がする。


でも、私にこんなチャラチャラとした知り合い居ないし…。


「大丈夫?」


向かい合い、両肩を支えられる。


この人が支えてくれなかったら、また私は座り込んだかもしれない。


足に力が入らなくなって来たのもそうだけど。


意識が朦朧として来た。


ぼんやりと、その後の事は、覚えている。


その男性に凭れるように抱き着いてしまった。


「えー、どうなの?これ?
喰っちゃうよ?」


そう、クスクスと笑いながら言ってるのが聞こえる。


この人の香水なのか、とても良い匂いがして、
そのまま意識を手放した。